近年、障がい者が農業分野で活躍する姿が注目されており、これは障がい者の就労の機会や就労訓練の場として、また農業の新しい担い手としての期待があるためである。そこで本研究では、障がい者の農業分野での取り組みを調査し、農業と福祉の連携の可能性と障がい者が農業分野で活躍するための支援の方策を検討するものである。 まず、知的障害者の農業活動の実態調査として、障がい者の農業分野での就労の可能性について、全国の農業高校380校と大学の附属農場54農場を対象にアンケート調査を行った。農業高校では、農業高校生を対象とした農事作業実習のための農場を有しており、また農学系学部は農学学系学生の実習教育に供するため附属農場を有している。農業高校ならびに大学附属農場における特別支援学校生や障がいを持つ人に対しての農場の開放の程度について調べたところ、多くの農業高校ならびに大学附属農場で障がい者との連携が取り組まれていることが分かった。しかし、障がい者の農場での雇用については、農業高校での雇用事例はきわめて少なく、1名のみを雇用する学校が、回答を得られた175校のうち8校のみで、5%に満たなかった。一方大学附属農場では、障がい者を雇用する農場が比較的多く、30%以上の大学附属農場で2人から5人程度の複数名を雇用することがわかった。 農学系学生と福祉系学部の学生を対象に、障がい者に対する理解や障がい者就労に対する意識を調べたところ、両学部の学生とも障がい者に対しての理解を示したが、就労支援に対する意識に大きな差が認められた。これは、障がい者が一般就労を目指す際に、受け皿となる一般企業の人材の意識に差があることを示唆する。このため、農学系学生などの産業学部においても、一定程度の障がい者支援に関する教育を実施することは、障がい者の就労を推進する上で意義が高いことが分かった。
|