本研究は、知的障害者を中心として独自の歩みを続けている小規模作業所「あさひのあたる家」について、その設立に至るまでの背景と実際の活動を分析し、制度的、財政的なバックアップの少ない作業所が、どのようにして立ち上がり、維持、運営されているのかというひとつの道標を提示することができた。その結果、作業所設立の動機づけとして、【保護者の願い】【卒業生の行き場のなさ】【解雇・リストラの対応】【中継地点】【会社側のプレッシャー】【ヒューマニズム】【先導者の存在】が明らかとなった。また、小規模作業所の設立や運営を維持していくためには、支援者の根強い力と気持ち、行動力が求められる。行き場を失った卒業生にとって、「仲間と共に働く」という、私たちにとっては当たり前とされがちな活動に生きがいを見出し、生活の再スタートを切っていく姿は、支援者の継続的なサポートの原動力にもつながっている。地域の人々や関係企業などは、常に、学校や保護者、子どもたちの動きにも着目していることが明らかとなった。設立に至る過程では、「やれるわけがない」「何を素人集団がやっているのか」「すぐにやめてしまうだろう」などの声もよく受けていた。 それだけ、この設立に関わった者たちは、何も知らない、分からないところからスタートをしている。ただ、ひたすらに、子どもたちの生活や労働を求め、紆余曲折しながらも、前向きに活動している姿が、一人、また、一人と協賛者、協働者を呼び寄せることが証明されたとも考えられる。支援者同士でありながら、足の引っ張り合いをしたり、保護者間の関係性を調整することができずに、仲間を失っていくこともあった。利用者が増えてくるにしたがい、保護者間の調整もより必要となり、支援者の輪が広がるとともに、それらをうまくコーディネートしていくことも求められる。小規模作業所が本来持っていた利点やまとまりに課題も出てきているが、常に、作業所の設立と目的の原点に立ち返って、一つひとつの課題を紐解いていかなくてはならない。
|