本研究は、無駄にしない行動を促進する要因の1つと考えられるもったいない情動という心理的概念に着目し、1.もったいない情動が環境配慮行動に及ぼす影響の検証、2.もったいない情動が生起するメカニズムの検証、3.もったいない情動がもつ心的機能の検証などの基礎理論を確立することが目的であった。本年度は、1に関して、学校給食の残食へのもったいない情動の影響について、日本教育心理学会第52回総会において発表した内容をもとに、図書「学校で役立つ社会心理学」へ執筆を行った。2に関しては、小学校1年生から4年生を対象に,もったいないと感じやすい場面を提示し,その場面における反応の発達的な検討を行った。結果については,次年度以降に発表する予定である。3に関しては、昨年度実施したもったいない情動の構成概念妥当性の検証の結果を日本社会心理学会第53回大会において発表し,また,福岡教育大学紀要第四分冊で執筆した。また,昨年度実施したもったいない情動の動機づけを行動レベルで確認するための実験的研究の報告を日本グループダイナミックス学会第59回大会において発表した。また、これまでの研究発表において頂いた意見をもとに、調査と実験を追加実施した。調査では,もったいない情動が喚起された後の変化について,量的な検討が行われていなかったため,評定尺度法を使用して調査を行った。結果は,もったいないと感じることによって,類似した出来事によってもったいないと感じないように行動することが明らかとなり,これまでの結果を支持した。また,実験では,もったいないを状態的,特性的のそれぞれ片方ずつしか検討していなかったため,両方から捉えた分析を行った。結果は,情動特性が高いことと,状態的な情動を喚起させた場合のいずれも,もったいないと感じないようにする行動が観察された。
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