目的:場における笑いやユーモアは、仲間意識を高めたり場の緊張を緩和するなどの効果があり(森田、2008)、対人的相互反応における質的障害が指摘されている自閉性スペクトラム障害(以下、ASD)者の対人的やりとりを促進する糸口になる可能性が考えられる。本研究は、共生社会の礎となる特別支援教育の推進をするにあたり、発達障害児と周囲のひととの対人関係を構築するために、「笑い」や「ユーモア」が果たす役割について検討することを目的する。 方法:そのために、他者とのかかわりに不安を抱いている自閉症スペクトラム障害者である事例Aがユーモア共有を行うまでのプロセスを明らかにした。Aが参加している心理劇的ロールプレイングにおけるAがユーモア共有した場面から検討を行った。 結果と考察:検討の結果、ロールプレイの開始前にAは社会的な場面に不安を感じていたものの、スタッフに指示されたユーモア表出を行い、ユーモア共有を行ったことをきっかけに、自発的なユーモア表出を行い、社会的場面における不安が軽減したというプロセスが示された。こうしたAのユーモア表出について、心理劇的ロールプレイングにおけるスタッフの指示的かかわりと受容的なかかわりの2つを組み合わせて行ったことが影響していることが示唆された。
|