研究概要 |
目的: 自閉症スペクトラム障害などの発達障害やその症状を評価する上で,行動的/物理的/生理的指標による客観的基準を用いることが望まれている.本研究では,簡易な知覚判断課題における発達障害者群と定型発達者群の行動成績ならびに脳血流動態を計測して比較し,自閉症等の広汎性発達障害をスクリーニングするためのテスト開発に有用な指標の発見を目指して研究を行った. 方法: テスト刺激にはNavon図形を用い,大域・局所判断課題を行った.その刺激図形は,あるアルファベット文字(例えばL)を並べて,大きなアルファベット文字(例えばHやL)を描いたものが用いられた(文字条件).また,△等の図形を用いた図形条件も用意した.試行前に予め「全体(大域)」か「部分(局所)」のどちらの図形を判別すべきかが指示された後,手がかり刺激(1個の文字または図形)に続いてテスト刺激が呈示され,参加者は指示された判別課題を行った.また,課題実施時には前頭前野ならびに後部側頭葉,下部頭頂葉を含む後頭葉領野の脳血流変化量を近赤外分光法装置(Hitachi-Medico, ETG-4000)によって計測した. 参加者: 定型発達群では大学生および高校生,社会人の27名が,発達障害群では高機能自閉症スペクトラム障害と診断された26名が参加した.参加者からはインフォームドコンセントが得られ,参加後に小額の報酬が支払われた.本研究は所属大学の倫理委員会による審査を経た. 結果と結論: 課題遂行は,定型発達群の方が発達障害群よりも有意に早くまた正確であった.一方,脳血流変化量は課題遂行時には両群に一貫した違いは見られなかったが遂行後(休憩時)の血流変化特徴が異なっていた.この結果は,両群では自発状態での脳活動が異なることを示すことから,両群の判別指標として有用な可能性を示すものである.
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