研究課題
本研究の目的は、近年増加傾向にあるにもかかわらず、これまで実証的研究がほとんどなされておらず、そのため発達相談や教育現場で対応の指針となる学術的提言が早急に求められているバイリンガル広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder:PDD)児の言語コミュニケーション障害に関する基礎研究にいち早く取り組むことである。初年度は日英バイリンガル・日本語モノリンガルPDD児、日本語モノリンガル健常児を対象にした語用論能力(実行機能および会話スキル)の実験心理学的調査を行った。具体的な調査内容は、以下の通りである。(1)バイリンガルPDD児の発達障害の特徴と言語コミュニケーション力を把握するために、バイリンガル定型発達児のコントロールグループと合わせて二ヶ国語の発達検査を行うとともに自然会話データを収集した。(2)親子会話および実験者と子供の会話を、自由遊び・絵本読みの場面で録音録画した。(3)バイリンガル・モノリンガルPDD児保護者に記入してもらう質問紙調査を作成し回答を依頼した。(4)実行機能発達調査と、研究代表者が開発した対人コミュニケーション能力調査を行った。(5)自然会話データの書き起こしを開始した。データの記述的な分析結果は第22回発達心理学会大会のシンポジウム「多文化共生・多言語環境における子どもの発達と障害」で報告された。シンポジウムを通して米国の日英バイリンガル公立小学校などと研究協力関係を結ぶことができ、今後の研究発展の道筋を確認することができた。
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Development and Psychopathology
巻: 22 ページ: 353-360