研究課題/領域番号 |
22653079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 洋子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (20123341)
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キーワード | ナラティヴ / ビジュアル / コミュニケーション / 対話 / 医療 / モデル構成 / 教育方法 |
研究概要 |
人と人のあいだをむすぶメデイエーター(媒介人)やミーデイアム(媒介物)を介在させる三項関係ナラティヴを推進することによって、教育と医療の新しい理論と方法論を構築する。本研究では、生活習慣病の代表である糖尿病医療を事例に、適切なミーディアムを開発し、三項関係ナラティヴの理論的・方法的モデルを提案することを大きな目的にしている。 本年度は、おもに次の3点にわたって、新しい理論的フレームワークと方法論の構築を試みた。 1)「ビジュアル・ナラティヴを用いた三項関係」理論と方法論を下記の3つの観点から検討した。 (1)治療的三項関係:医師-ミーディアム(m)-患者の三項関係 (2)医師教育の三項関係:医師(経験者)」-ミーディアム(m)-医師(新参者)の三項関係 (3)患者教育の三項関係:患者(経験者)-ミーディアム(m)-患者(新参者)の三項関係 2)「ビジュアル・ナラティヴを用いた三項関係」の理論と方法論に関する研究発表と学際的討論。 第35回口蓋裂学会総会・学術集会や日本心理学会など、医学や心理学の関連学会で、医療場面における三項関係(並ぶ関係)の意義やビジュアル・ナラティヴの方法論について研究発表し、学際的討論を行った。 3)ビジュアル・ナラティヴに関する多様なメディアの資料収集と教育方法の探索。 斬新なアイデアを生み出すのに役立つフィールド・ワークを行って資料収集した。美術、映画、写真、漫画、ゲームなど多様なメディアをミーディアム(媒介物)として用いる方法や、教育的ワークショップの方法を探究するため広い分野にわたって探索し、広範な文脈と関連づけて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
糖尿病医療に限らず、ほかの医療場面においても、あるいは医療場面に限らず、「三項関係ナラティヴ」が適用できることがより明確になり、その意義も価値も具体的に明らかになってきた。当初の予定以上に、三項関係ナラティヴの理論的・方法論的検討を、個別の文脈を超えた広い視野から行うことが可能になり、モデル構成を考えられるところまで進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、「糖尿病医療」を中心に研究計画を考えていた。しかし、共同研究分担者の配置変換による医療現場の変化や産休や育児休暇のために、糖尿病の医療に限定した計画は一部変更をせざるをえなくなった。しかし、そのかわりに、ほかの医療場面においても、あるいは医療場面に限らずより幅広い場面で、「三項関係ナラティヴ」が適用できることがより明確になってきた。糖尿病医療やミーディアム開発に局限するのではなく、三項関係ナラティヴの理論的・方法論的検討を広い視野から行うことが可能になり、実践的モデルが提案できるところまで見通しが立てられそうである。そこで今後は、医療と教育両面に幅広く役立つモデル構成により重点を置いていきたい。
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