本研究は、ネットワーク通信を利用した認知行動療法(オンライン認知行動療法)による介入研究である。今年度は協力に同意が得られたうつ病患者を対象として本格的な介入を行う予定であったが、東日本大震災の影響もあり前年度に構築したシステムの破損、実施場所の見直し、認知行動療法を実施するセラピストの欠員などがあり介入開始時期が大幅に遅れることとなった。このため協力者の募集期間中に参加者を集めることが困難となり実際の治療介入を行うことはできなかった。 以上の理由により、本年度はオンライン認知行動療法の実施システムの検討及び復旧が中心に行われた。ここでは使用するコンピューターの動作環境の再調整、ネットワーク環境整備、相互通信のためのソフトの更新などを行い、再度オンライン認知行動療法が施行可能となる設備を構築した。また、それに平行して認知行動療法に精通したセラピスト数名で検討を重ね、昨年介入が行われた事例についての分析および認知行動療法をオンラインで行うためのより合理的で適切なツール作成及び治療プログラムの再検討を行った。 治療環境が整えられた後は、研究協力に同意が得ら得た健常者を対象にした模擬的な介入を実施し、実際の介入における問題点を明らかにしてプログラムの改良を図った。 これらの予備結果を参考にしてオンライン認知行動療法に必要な情報を収集し、また、国内の主要研究者と意見交換を行うことで今後の介入研究において必要な認知行動療法についての最新知見、患者評価に利用する予定の認知機能検査に関する情報を整理した。 本研究はうつ病患者に対する新たな治療プログラムの開発であり、対象者の抑うつ症状をできるだけ改善させることが望ましい。そのためにネットワーク通信を利用した形であっても実際の面接により近い環境を整えることが最重要であり、そのためのシステム作りを行った。
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