研究概要 |
高齢期は、聴覚や視覚・運動機能・脳活動といった生理学的な側面における機能の低下および職場や地域での役割の変化などからくる心理的な側面や社会的な側面での喪失を経験する年代であるとも言われている。しかしながら、これまでの体験や経験から多くのものを体得し、これを活かして他者に喜びを与えたり、自分自身もさらに発展していく時代であるとも言われており、さらなる人間的成熟に向かって成長する時期であるとも考えることができる。 そこで本研究では、書道や俳句また絵画や写真や音楽および太極拳やダンスなどの活動に意欲的に取り組でいる高齢者の方々が、生理学的側面や心理的側面さらに社会的側面でのバランスをどのように保っているのかを明らかにし、新たな「老いのモデル」を構築していきたいと考えている。 今年度は、自ら意欲的に活動を行っている高齢者の方々を対象に、生理・心理・社会といった3つの側面がどのように関連しているのかについて検討をすることを目的とした。本研究の対象者は、社会活動に積極的に参加し、絵画や書道活動などの創作活動を自主的に行っている高齢者70名であった。この調査では,心理的側面は,性格や知能および創造性検査を用いて測定した。また,身体的側面は片足立ちや握力などを測定し,社会的側面は地域活動への参加頻度やソーシャル・サポートの有無などから測定した。さらに,心身ともに健康な高齢者20名を対象に脳波とMRIの測定を実施した。 今後これらの結果を分析し,高齢者が生物学的側面と社会的側面、心理的側面のズレをどのように補償し、さらに生じたズレが心理的加齢にどのように影響を及ぼすのかという点について検討していく予定である。
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