本研究では、視線検出装置を用いて、幼児を対象に顔様の視覚刺激のどこに注目するのかを定量的に分析し、そのデータをもとに自閉性障害の早期発見法を提案することを目的としている。一般に自閉性障害の診断は、言語的発話が乏しいということで、およそ3歳になされることが多い。だが本研究は視覚探索による抽出法であり、言語的発話に頼らないという点で、言語的発話が活発になる3歳より早い時期に障害が発見できる可能性が広がり、早期スクリーニング法として有効だと考えられる。 24年度は、初年度からの継続として自閉性障害児を対象に、顔および顔様刺激を提示し、その刺激に対する視線計測を実施し、データ数の蓄積に努めた。自閉性障害児が顔のどのパターンを避ける傾向があるのかを詳しく調べるために、人の顔写真とそれが天地逆になった顔写真と並べて示したり、単純化した顔様パターンとそれを天地逆にしたパターンを並べて示したりして、どちらをより長く眺めるのか、あるいは避ける傾向にあるかなどについて調べた。前年度までに蓄積した健常児とのデータと比較することによって、自閉性障害児の注視パターンを視線検出装置によって定量的に分析し、自閉性障害児にみられる特徴をあきらかにした。 また、同じく視線検出装置を用いて、絵本「おおきなかぶ」の読み聞かせを健常児と自閉性障害児を対象に実施した結果をまとめて、国際学会で発表した。健常児が絵本の登場人物や動物の顔、その中でも特に目をみること、また動作を示す手や足の部分をよく見たのに対して、自閉性障害児は登場人物の顔や動作を外した、それらの周辺部分をよく見る傾向があった。
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