研究概要 |
研究計画の趣旨に従い,次の三つの実験を行った。 (1)携帯メールを書くとき,産出しようとするメールの情報量が増えるほど,打鍵数も飛躍的に多くなり,打鍵数を減らさない限り,意図するメールを産出しにくくなる。打鍵数を減らすためには,今まさに産出しようとしている発話そのものに注意を向ける必要が生じる。実験では,実際に携帯メールを産出してもらった。実験の結果,言おうとしている表現そのものを意識しながら実際に携帯メールを書いていることが確認された。 (2)単語の色がどのように記憶されるかを実験的に調べた。潜在記憶課題を用いた実験の結果,学習段階では,単語の色を答えてもらうと,色単語,高連想語,中連想語,低連想語,無連想語の順に反応時間が大きくなったが,読みを答えてもらうと,これらの単語のグループの間の反応時間に差は認められなかった。テスト段階では,単語の配色に対する好ましさを判断してもらった。学習段階で呈示していた配色の単語を好ましい配色として選ぶ割合が測定された。学習段階で色を答えていた場合には,先の単語のグループ間の正答率に差が生じないが,読みを答えていた場合には,色との意味的な関連性が高いほど正答率が高い傾向が認められた。単語の読みの処理は自動化されていると考えられるが,あえて単語の読みに注意を向けると,記憶痕跡はより強固となり強い潜在記憶となって残ることが示唆された。 (3)グローバル時代に新たに生じたコミュニケーションの実例として,海外旅行をとりあげ,海外旅行の目的地に対する印象が訪問前と訪問後でどのように変化するかに関する研究を行った。海外から北海道,札幌を訪れる旅行者が,訪問前に持っている日本に対するイメージが北海道や札幌での旅行行動にどのような影響を与えるかを,質問紙調査を行い調べた。因子分析の結果,国,地域および目的地に共通する三つの因子,"Physical Impression","Place Attractiveness","Spatial Impression"が見いだされた。さらに,共分散構造分析の結果,"Place Attractiveness"と"Spatial Impression"において旅行前の国のイメージの影響が認められた。
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