研究概要 |
本研究は、非右きき者の認知特性と運動特性を異なる方法論で検討し、日常生活において心的及び身体的負担なく安全に行動できるようにするための基礎資料の収集と,それらに基づいて社会における少数者向けの安全規範を作成する効果的な方法論を探ることが目的であった。研究成果には、次の3点が挙げられる。1)非右きき者の日常生活における心的及び身体的負担となる行為や安全上に危険が大きい行動特性についてのインタビュー調査法によるパイロット調査では、非右きき者が意識するレベルのものは右きき者と比べて同等であった。このことは逆に心的リソースを常時配分し負荷がかかっていることの裏付けである可能性があり,医療場面での大規模質問紙調査を実施したが、結果の整理は終えていない。2)片手の運動行為を伴う左右方向に配置した道具の遇発記憶実験事態での結果では,きき手と連関する記憶再認錯誤が明らかとなった。この結果にもとづいて,記憶を再認する際に、線条体-基底核-小脳運動系の運動イメージの自発的解発が想定でき、それを基盤とした神経心理学的モデルを提唱した。3)非右きき者が優れた空間能力を持つか否かとそのことの加齢との関連を検証する実験を行った。非右きき者は右きき者に比べて視覚的イメージに依存する傾向が高齢期には顕著となり、認知機能の検討に加齢の影響を加味することの重要性が明らかとなった。
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