研究最終年度は、米国以外の諸国(英国、ドイツ)および、米国の教員評議会の役割について調査をした。 英国では政府からの研究評価に基づいて大学への運営費交付金が算定されるということもあり、大学本部当局による学術マネジメントが比較的に強い。実際、訪問をしたキングス・カレッジ・ロンドンでは、成功している数学科は教員を30名から60名へと倍増させていたのに対して、振るわない工学部は2014年度から廃止が予定されていた。一方、オックスフォード大学については、中央による管理を完全になくし、間接経費も含めて学科に大学収入を全て配分してしまい、学科単位での自活を基本としていた。このような学科あるいは学部単位の完全独立採算制の方式はハーバード大学など米国の最もトップの大学にも見られる。部局の活力を活かした方が大学総体として競争力が得られるランクの大学と、大学本部でコントロールした方が良い大学とで分かれるということである。 ドイツの大学については、日本における国立大学法人化と同様の動きが2007年頃から起きており、また日本の21世紀COEプログラムと類似のエクセレンツ・イニシアティブが導入されたこともあり、従来の事務局長の強力な権限から、学長室周りの戦略形成へと移行しつつあった。これから大学本部による統制がどこまで強化されるかが興味深い。 米国の教員評議会は近年日本でも大学の執行体制と並んだshared governanceを機能させるための組織として注目され、学長のリーダーシップの強化につながると理解されている節もあるが、実際にはこれは執行部の独走を監視するための抑制と均衡を成り立たせるためのものとして理解した方がよいとのことであった。 研究型大学の学術経営は、それぞれの大学の置かれた状況や文化により大きく異なり、必ずしも中央統制型のみでなされるものではないということが理解された。
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