本研究の目的は、高校教育改革実践の構造的・臨床的な問い直しを行い、内発的な試みが促進/阻害される社会的・組織的要因を探るとともに、持続可能な改革が成り立つ諸条件を理論的・実証的に同定することにある。本年度は、3年計画の1年目として以下の取り組みを試みた。 (1)これまで継続的にかかわってきた公立高等学校において学校協議会の委員として参与観察を行った。いずれも高校教育における貴重な組織的実践として大きな成果をあげており、これらをいかにして持続可能な取り組みに進化させていくかが課題となっている。 (a)大阪府立松原高等学校においては、とくに1年次の学年団において「産業社会と人間」やホームルーム合宿等に焦点づけた実践の革新が内発的に展開されていた。とりわけ新任者が学校文化を身体化しつつ創造的に変革していくためのファシリテーションが効果的に実践されていった。当該校の文化を醸成した担い手がどのように次世代を育成しているかに私たちが学ぶべき多くのヒントが内包されている。 (b)大阪府立布施北高等学校は、日本版をさらに革新しいわば布施北版デュアルシステムを構築し、組織内外ともに高い評価を獲得するに至っている。ここでは、教員集団が試みた実践が地域や保護者の応援団との緊張感のある(しかし、温かい)相互作用を通して、きわめて困難な学校の状況と向き合い続けるエネルギーが生み出されている。とはいえ、行政の能力主義的・市場原理主義的な選抜制度等の改革という難題が突きつけられており、これをどう克服していくかが課題となっている。 (2)高校教育改革の持続可能性を検証する出発点として、全国のすべての公立高等学校(全日制、分校含む)を対象とするパイロット・サーベイを企画・実施した。具体的なデータの収集・分析は次年度にかけて展開される予定である。
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