今年度は、栄養教諭の職務実態調査を行った。4つの先進的事例の分析を進める中から、食育実践の類型として「栄養教諭主導型」、栄養教諭と家庭科教諭と食の専門家が連携した「地域連携強化型」、全市的に行政部局の連携に地域・家庭を巻き込んだ「民間連携重視型」、教育委員会主導による「地域密着型」のパターンを示すことができた。この類型からは、教育委員会主導型の指導と首長部局の支援体制が整っていればこそ、栄養教諭の専門性が発揮できることが分かった。しかし、食育推進の専門職は栄養教諭だけであり、これを解決するには地域の中に栄養士会や医療機関、食品開発等の地域連携体制を強化した「総合力強化型」の食育推進を展開することで児童の健康教育や地域との連携に専門職の支援を得ることができ、栄養教諭のコーディネート力、ひいてはマネジメント力の拡充が期待できることを明らかにした。一方、栄養教諭に求められる資質は、カウンセリング能力、判断力、対応力、コーディネート力、企画力、実行力、連携調整力、応用力、使命感といった資質を持ち合わせてはじめて職務内容を遂行できるものであることがわかった。特に「食に関する指導」における資質形成には授業づくりを通した指導力、いわゆる「授業力」が求められていた。調査からは、栄養教諭の役割は養護教諭や学級担任との連携調整を行いながら個別相談指導につなげていた。それぞれの役割を決定し、相談指導全体をコーディネートする役割からさらに発展させた「総合的なマネジメント」の役割が求められていた。審議経過や答申からはコーディネーターの役割が求められていたが実態調査の結果から、コーディネーターを発展させた「総合的なマネジメント能力」が求められていたのであった。以上の分析結果から、栄養教諭養成課程では、これに必要な技能と能力を修得させていくことが重要な課題であることを明らかにした。
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