本研究は広義の能力開発(キャパシティ・ディベロップメント)に関する効率性指標の理論的、実践的開発研究を行うものであり、わが国の政府開発援助(ODA)における各種教育・研修プロジェクトを具体的な研究対象とする。 効率性は費用と有効性とが明確に把握できればかなりな程度測定可能である。ほとんどの技術協力プロジェクトは個人や個人が属する組織の能力開発を目的としている。そこで、プロジェクトによって誰の能力がどれだけ開発されたか、及び、開発された能力によって、どのような社会的改善が図れたかを明らかにすることが必要になる。 実務において研修の効果を測定する場合、研修終了直後に研修内容や指導方法に関する研修参加者からの評価、研修で与えた知識・能力についての研修参加者の理解度など研修のアウトプットの測定が行われることが多いが、その知識・技術の組織での活用や研修の効果としての組織の生産性の向上など研修のアウトカムについての測定、また研修効果の金銭的評価はこれまであまり多く行われていない。 本研究では、アジア生産性機構が実施している短期研修プログラムの研修参加者を対象として、個人の年収の増加、研修参加者が研修で習得した知識・技術を他者に伝達することによって生じる波及効果、さらに、研修参加者が研修で習得した知識・技術を用いて実施した自国における開発プロジェクトという研修のアウトカムを測定し、個人の年収増加、波及効果、開発プロジェクトの実施についてそれぞれの収益率を算出することによって、研修の社会的効果を明らかにした。
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