本研究は、環境にかかわるモラルの指導を「環境モラル教育」と命名し、その研究を通じて、現行の「道徳の時間」に使用されている国語科的な読み物資料中心の副教材を大きく変革させたいと考えた。具体的には、環境問題を単元にした、総合単元的な道徳教育の一環としての「道徳の時間」の教材開発を中心に置きながら、その視点から、社会科や理科や生活科をはじめ、「総合的な学習の時間」における環境問題の教材の改善に向けても示唆を与えようとするものであった。 まず、日本の現状について、「環境モラル教育」の視点から、カリキュラムのいくつかの領域を分析にした。その結果、「環境モラル教育」は、カリキュラムの各領域、さらには学年の枠に縛られてしまい、個別で単発的な実践に留まっている。例えば、「環境モラル教育」にとって内容的にもっとも親和性の強い道徳の領域では、すぐれた考え方が提示されても、実際の授業において、読み物資料を使った1時間毎の完結型が大前提になっているうえに、道徳実践ではなく、道徳的実践力の育成に限定することが求められるために意識や行為を伴った統合的な道徳教育は十分に展開できない状態であることが明らかになった。また、社会科や理科などの教科の授業では、それぞれの特有の制約があって、十分な「環境モラル教育」を展開することは不可能であることも明確化された。そのうえで、日本で「環境モラル教育」を展開するためには、総合的な学習の時間がもっとも適することも確認された。そのうえで、世界で先進的な環境教育を行っているドイツに注目し、そこでの総合的な学習である「事実教授」の教材について「環境モラル教育」の視点から分析検討し、日本における「環境モラル教育」の可能性を模索した。その際に、今回は、分析対象の教材として、年間を通して随時公示されているドイツ政府の教材・資料を中心に扱った。
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