特別支援教育における情緒障害の中核に位置づけられる「選択性緘黙」については、その原因や背景要因が明確になっていないことはもとより、学齢期や思春期以降における治療教育的アプローチや教育的対応についても十分確立されていないことにたいして、以下のことを行った。 (1)選択性緘黙に関する最新の研究情報の収集し、整理する。 選択性緘黙に関する先端的研究文献の収集、並びに、国内外の関連学会大会・機関誌における最新の研究情報を収集した。特に応用行動分析学、行動療法の立場の研究情報の収集を行った。その結果、特に中高校生や成人等の年長者に対する研究文献は少なく、今後の課題であることが確認された。 (2)選択性緘黙の経験者と保護者に対する予備的調査を整理し、学術誌に投稿する。 選択性緘黙の経験者・保護者に関する質問紙調査を整理し、選択性緘黙に関連した諸条件の経年的変化、選択性緘黙改善への自己努力とその結果等についてまとめ、学術誌に投稿する準備を行った。 (3)選択性緘黙児に対する介入研究を行い、成果を学会で発表する。 大学教育相談室に来談した選択性緘黙を主訴とする事例(2事例:小学生1事例、高校生1事例)に対して治療教育的アプローチを実施し、年齢段階や自己認知の違い等における方法論やその効果の差異等を検討した。そのうち小学生の事例ついては、母親、担任、特別支援教育コーディネーターに対するコンサルテーションを行った結果、一定の改善が見られ、その経過を日本特殊教育学会第49回大会においてポスター発表を行った。
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