1)選択性緘黙児に対する介入研究のまとめ 大学教育相談室に来談した選択性緘黙を主訴とする事例に対して行った治療教育的アプローチをまとめ、その効果と今後の課題を明らかにした。特に従来、研究や実践が十分なされてこなかった思春期以降の事例として、大学教育相談室に来談中の高校生1名に対して行った行動療法的アプローチをまとめた。本事例については、大学教育相談室で音量計を利用した音声増強トレーニングと行い、併せて、地域社会でエクスポージャーを試みた。その結果、音声増強トレーニングにより当初より約10dB大きな発話が可能となった。一方、地域社会でのエクスポージャーは段階的に行うことが難しく、期待された効果は弱かった。これらをまとめ、日本特殊教育学会第50回大会でポスター発表するとともに、英文論文にまとめた。 2)選択性緘黙に関する最新の研究情報のまとめ 小学生までの年齢児の選択性緘黙については刺激フェイディング法を中心とした行動療法的アプローチの有効性が明らかにされているが、思春期以降の介入方法については十分でなかった。思春期以降の場合、選択性緘黙の本人の意志や想いを十分理解した上で、話そうという意志を無理のないように支援することが重要であることが指摘された。そこで、「園山研究室選択性緘黙HP」を新たに開設し、本研究課題で得られた成果や従来の研究成果をまとめ、選択性緘黙の概要・特徴、支援方法の概要・具体、関連する研究論文等、関連する資料等を掲載し、一般社会の理解促進を図った。
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