研究概要 |
重度・重複障害児の関わり合いにおいては、非言語的な交信関係をいかに豊かにしていくかが課題となる。重障者の発信情報の受信においては、行動が微弱な場合や行動の表出条件が容易に推測できない場合には、積極的な読み取りが有効ともいわれている。情動表出の中でも、特に、笑いや微笑行動について、健常児・者の発達的視点から多く研究されてきた。郷間ら(2005)は、笑いがその背景にある認知や情緒や社会性の発達の諸相を示すものであるとして、重度・重複障害児の精神活動を微笑行動によって捉え、QOL評価への可能性を示唆している。しかしながら、重障者においても、生活年齢と経験を重ねる中で笑いの意味は発達的に変化しており、笑いのみが快や良い状態を示す表情ではない可能性がある。 重度・重複障害児と支援者の交信場面における情動表出の質的評価が試みられ、笑顔を介した重障者独自の社会性の発達が指摘されてきた(水野・堅田,2008,2009)。重度・重複障害児と支援者との交信場面における情動表出の中でも笑顔に着目した。特に、日常場面における重障者の表情が変化するのはどのような場面なのかについてその質的評価を試みた。 平成23年度は、笑顔の観察による質的評価に加えて、笑顔度測定を導入した。重度・重複障害児を対象とした笑顔度による笑顔の質的評価の予備的検討として、新生児・乳児を対象に観察および実験をおこなった。新生児・乳児を対象に、(1)安静場面、(2)音声刺激場面、(3)母親声場面、(4)新奇者あやし場面、(5)母親あやし場面を設定し、各場面において表出する対象児の笑顔について、笑顔度による評価を実施した。その結果、(5)場面での笑顔度が一番高く、(2)や(3)の音声刺激のみでも笑顔度が60以上の笑顔が表出しており、特に2と3ヵ月児においてその傾向が強かった。新生児・乳児を対象とした研究から、笑顔表出場面と笑顔度の関連が示唆された。
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