研究概要 |
有理整数環上では代数体の定義方程式に無限に近い特異点は存在しない,という当初の予想は,このままの形では成り立たない例が容易に構成されたため,予想を修正することにした.一つの代数体の定義方程式の選び方は一意的ではないが,その中の「極小」な式については非特異であるか,または特異であっても無限に近い特異点が存在しないようにしたい.問題は多項式の極小性をどのように定義するかである. 上記の問題に関連して,19世紀後半に局所化を用いて代数的整数論の基礎を築いたゾロタレフの結果と,20世紀前半のバウアーによる多項式のピュイズー数の研究が参考になる.特異点の重複度とその点の下にある素数とが互いに素であれば,変数にチルンハウス変換を施して単項変換を行うと最大接触度を確実に下げることができるが,チルンハウス変換を行えない場合でもワイエルシュトラス座標を選ぶと同じ効果があることが知られている.ワイエルシュトラス座標を整数係数の場合に拡張することにより定義方程式の局所的な「極小性」に相当する性質が得られるかどうかを引き続き研究する. また,整数係数では局所的な極小性が得られたとしても直ちに大域的な極小性に延長できるとは限らない.証明の途中で係数環の完備化を行うと大域化は自明でなくなるからである.この点でも,完備化という手法を用いていない古典的なゾロタレフの仕事は本研究において参考になると思われる.
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