(1)実2次拡大を定義する判別式が正の2次式から派生する射影2次曲線のもつ有理整数環上の特異点の特徴を調べてみた.定義式が2次であっても無限に近いものを含めて2重点が3つ以上ある場合もあるが,現時点で2重点を解消した点の剰余体が素体上の拡大を引き起こす例は判別式正では見つからなかった.個別の方程式を扱う限りでは,それのもつ特異点の幾何学的な性質,たとえば特性対の集合と,整数論的な性質,例えば類数や実と虚を区別できるような性質,さらにはゼータ関数との直接の関係は存在しない可能性が高い.同じ代数拡大を定義し,特異点の違いしか無い定義式の集合を考え,これを拡大ごとに比較して違いを調べることは今後の課題であるが,2次拡大のときは,これらの定義式のなかで判別式が極小なものは非特異であるから,比較しても特異点と関係する数論的性質は興味深いものかどうかは分からない. (2)一般2次式の判別式を定義方程式とする整数係数射影平面曲線をCとし,Cの向きを保つ自己同型群である全モジュラー群の実射影平面への作用の例を計算した.Cの内部の有理点は判別式が負の,内部の有理射影直線は判別式が正の2次形式に対応し,それらの簡約や類数の計算は実数の範囲だけでできる.これは古典的な結果であるが,拡大で生じる複素数の概念を必要とせず,実射影平面の初等幾何学の有限の操作だけでできることはあまり注意されていない.これらの高次元化はこれからの研究課題である.
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