研究概要 |
本研究のテーマは大きく2つの方向があり、それは (1)結び目のアレキサンダー多項式の零点の分布について新たな事実を発見すること (2)アレキサンダー多項式の類似を通じて、整数論の岩澤多項式の研究を進めるということである。 22年度には新しい計算機を遵入して,(1)に関する数値実験を実施し、零点の分布のデータを集めた。その結果、Hoste予想の成立が広範囲で確かめられてきている。(この実験は、23年度以降も継続して実施する。) 去る1月にトロント大学の村杉教授と名古屋工業大学の平澤准教授に学習院大学に来ていただいて本研究のテーマについて討論を行った結果、上記2つの方向の双方について大きな成果が得られた。(1)に関しては、村杉教授による「行列の正値性の応用」 が有効であることが確認され、また、2橋結び目についてはマイナス連分数による表示が理論と計算の両面で強力であることがわかった。今後この方向で研究を進める計画である。 (2)に関しては、整数論との類似を追求する上でのファイバー結び目の重要性が明らかになった。つまり、岩澤多項式の係数はp進整数であるが、アレキサンダー多項式にその類似を求めると、どうしてもファイバー結び目を考えねばならない、ということが確認された。今後、ファイバー結び目に関する位相幾何の手法の整数論への類似を追求することが重要である。
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