研究課題/領域番号 |
22654006
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
中島 匠一 学習院大学, 理学部, 教授 (90172311)
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キーワード | 代数学 / 幾何学 |
研究概要 |
本研究のテーマは大きく2つの方向があり、それは (1)結び目のアレキサンダー多項式の零点の分布について新たな事実を発見すること (2)アレキサンダー多項式の類似を通じて、整数論の岩澤多項式の研究を進める ということである。 (1)に関しては、22年度の予備的な計算のデータの考察から、今後は研究対象を「2橋結び目」に限定して、そのアレキサンダー多項式の零点の研究に集中することとした。2橋結び目は有理結び目とも呼ばれていて、ある有理数によって定まるが、その有理数からアレキサンダー多項式を計算する方法のどれが優れているかが明確でなかった。少し時間をかけて調査した結果、対応する有理数を偶数によって連分数展開してアレキサンダー多項式を計算するアルゴリズムがあり、それが一番優れているという結論に至った。このアルゴリズムに到達できたのは、有益な成果であった。 現在、そのアルゴリズムをMapleに実装する作業を行っており、24年度の早いうちにデータが収集できて、有効に活用できると考えている。 (2)に関しては、22年度に、「ファイバー結び目」が整数論との良い類似を持っていることが明らかになった。今年度の研究では、ファイバー結び目については、「完備代数曲線」との良い類似も成立することがわかった。完備代数曲線は整数論との類似にも登場する対象である。これで、「ファイバー結び目のアレキサンダー多項式」、「Z_p拡大の岩澤多項式」、「完備代数曲線のゼータ関数」の3者の間に良い類似が期待されることが明らかになった。 この類似の存在は研究を進める上で意義が大きく、今後の研究の指針となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2橋結び目のアレキサンダー多項式の計算アルゴリズムの選定に手間取ったために、Mapleでのプログラミングに遅れが出ている。 (岩澤理論との類似の考察は予定通り進展している。)
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今後の研究の推進方策 |
2橋結び目のアレキサンダー多項式の計算アルゴリズムが定まった(有理数の、偶数による連分数展開を利用する方法を採用)ので、Mapleを使った計算を実行する。 得られた数値データから、アレキサンダー多項式の零点の分布を調査し、予想の検証を行い、証明を探求する。 さらに、アレキサンダー多項式の整数論サイドでの類似である岩澤多項式の零点についても考察してゆく。
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