研究課題
囲む体積を保つ変分に対する面積の臨界点である平均曲率一定曲面(やその一般化,高次元化)について,平均曲率または体積をパラメータとする解の分岐が起こるための十分条件,分岐前後の解の安定性を判定する方法,対称性の崩壊現象が生じるための条件を得た.さらに,それらをRiemann多様体上の等周問題や,物理現象と関連の深い境界値問題に応用した.物理実験に動機を得た周期的平均曲率一定曲面に対する自由境界問題についての研究を行い,境界条件が単純な場合(自由境界が平面で濡れエネルギーが0の場合)については安定解を決定した.さらに,濡れエネルギーが0で自由境界が二つの平行でない平面である場合についても,安定性を判定する方程式を具体的に得た.曲面の各点の向きに依存して決まるエネルギー密度関数の曲面上での積分を,非等方的表面エネルギーと呼ぶ.曲面が囲む体積を保つ変分に対する非等方的表面エネルギーの臨界点は非等方的平均曲率一定曲面と呼ばれるものになり,平均曲率一定曲面の一般化となっている.同じ体積を囲む閉曲面全体の中で非等方的表面エネルギーの最小値を与えるものはWulff図形(と呼ばれる閉曲面に相似)である.本研究では,3次元ユークリッド空間内の円周を境界とする種数0の非等方的平均曲率一定曲面で安定なものは,Wulff図形または平面の一部のみであることを,Wulff図形の軸対称性についての仮定のもとで証明した.
2: おおむね順調に進展している
当初研究目的及び研究計画に照らし,研究は順調に進展している.
ユークリッド空間内の平均曲率一定曲面やその一般化である非等方的平均曲率一定曲面に対する境界値問題について,解空間の構造,解の安定性(「囲む体積」を変えない任意の変分に対するエネルギー汎関数の第2変分が非負か否か)を中心に研究を進める.また,境界条件を変化させた時の解空間の幾何構造の変化や安定性を調べる.さらに,得られた方法と知見を具体的な物理現象に応用し,その数学的な基礎付けを与える.
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)
Calculus of Variations and PDE's
巻: Vol.43, No.3 ページ: 555-587
DOI:10.1007/s00526-011-0423-x