曲面の各点の向きに依存して決まるエネルギー密度関数の曲面上での積分を,非等方的表面エネルギーと呼ぶ.これは,例えば結晶のように非等方性を持つ物質の表面張力の数理モデルを与える.非等方的表面エネルギーの臨界点を,非等方的極小曲面と呼ぶ.特にエネルギー密度関数が定数である場合には,曲面の非等方的表面エネルギーは面積の定数倍であり,非等方的極小曲面は通常の極小曲面である.平成24年度には,平成23年度まで仮定していたエネルギー密度関数に対する凸性の仮定をはずし,3次元ユークリッド空間内の非等方的極小曲面について,以下に述べる研究成果を得た.エネルギー密度関数は軸対称であると仮定する.この時,極小曲面であり非等方的極小曲面でもあるものは,常螺旋面に限ることを証明した.さらに,非等方的極小曲面であって管状曲面であるものの具体例を構成した.また,これらの非等方的極小曲面は,3次元ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率零の時間的曲面及び空間的曲面を特別な場合として含むことも示した. 互いに平行でない二平面上に自由境界を持ち,これらの平面が囲む領域内にある平均曲率一定曲面について,安定解を決定する手がかりを得た.この結果に平成23年度までに得た互いに平行な二平面上に自由境界を持つ安定な平均曲率一定曲面の決定についての研究成果を合わせると,境界条件の変化に対する解空間の不安定性を与える例を与えると予想され,その意味でも重要な成果である.
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