研究概要 |
時間に関して振動する外力項を持つ波動方程式に対する初期値問題の解の挙動は,所謂,極限振幅の原理によって特徴付けられる.すなわち,時間について周期的に振動する力を与え続けると,その振動と共鳴する周波数の波だけが生き残り,極限的には時間と空間に関して変数分離された状態が形成される事を主張するものである.本研究の目的は,斉次波動方程式に対する外部問題において,時間に関して振動する境界値を与えるときの解の挙動を考察し,上述の問題における極限振幅の原理に対応するものを定式化する事である.より具体的には,解の極限を領域の形状(例えば,ガウス曲率など)の言葉で陽的に書き下す事が目標となる. 本年度は,その研究目的を達成するために,解の弱極限を具体的に計算することを目指してきた.まず,ラプラス変換を用いて,斉次波動方程式の初期値-境界値問題を定常問題に帰着し,そのレゾルベントを解析した.その解の弱極限を求める際には,Kubota&Shirota(J.Fac.Sci.Hokkaido Univ.1967)におる議論を参考にして進めてきたが,そこで扱われているのはポテンシャル項と時間周期的な外力項のついた波動方程式に対する初期値問題であり,ポテンシャル関数とのベアリングをとる事で弱極限が計算されている.我々の問題では,どの様な関数とベアリングをとるのが有効なのか再検討する必要のあることが明らかになった.その考察を通して,外部問題において境界付近に停留している波の特徴付けを与える事を目指す.
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