銀河系星間空間に分布する星間塵(ダスト)による減光量を、数分角の分解能で導出することが研究目的であった。遠赤外放射に関する我々の先行研究(Hibi et al. 2006)に基づき、星間塵の熱放射をモデル化することによって、従来の研究(Schelegel et al. 1998)よりも高い精度が期待される。暗黒エネルギー探査には銀河カウントによるISW(Integrated Sach-Wolf)効果の検証が有力視されており、多数の銀河を統計的に扱う際に生じる、銀河系内星間吸収の補正がより高精度になる。 全天をいきなり対象とするのではなく、Cygnus-X領域と呼ばれる銀河面の一部、及び代表的な高銀緯天域であるSDF(Subaru Deep Field)を選び、試行的に研究を行った。その結果、我々が先行研究で見出したSEDのパターンを用いることによって、数分角分解能のダスト温度マップ、さらには減光マップを作成した。これを先行研究(Schelegel et al.; Dobashi et al.)と比較した結果、最大5等級に上る減光量の差がみられた。我々は温度分布の解像度を改善しているので、先行研究に比べて大幅に精度を改善できたと考えてよい。この成果は、Kohyama et al.(2010)としてThe Astrohpysical Journal誌に公表された。現在この手法を用いて全天の減光マップを作成中である。
|