本研究課題は原子核研究における「クラスター構造とG行列有効核力の相互規定性」を明らかするために、現実的核力に基づいて構築された「G行列有効相互作用によるクラスター構造状態の導出の道を確立する」ことを目的にしてきた。この目的を達成するために、22年度は ^8Beのα-αクラスター構造がエネルギー的に安定化するメカニズムを核力のテンソル力の状態依存性によって説明されることを示し、その結果を論文として公表した。この成果に基づいて、23年度は現実的核力のもとで ^<12>C核における殻構造状態を持つ基底状態と同時に励起0^+状態の3αクラスター構造状態を世界に先駆けて再現することを行った。3つのαクラスターが取りうるさまざまな幾何学的配位を設定して、各配位でのG行列有効相互作用を求めた。さらに、そのG行列有効相互作用を用いて、生成座標法方程式を解きあげ、^12C核の基底状態及び励起状態を求めた。その結果は、励起0^+状態は3α閾値(7.367MeV)の近傍(7.654MeV)に観測される0^+状態よりおよそ3MeV程度高く得られた。この3MeV程度高いエネルギー値の問題を解決することが23年度の主要課題となった。この問題を解決するためにはα-α間距離が(5fmより)大きな配位を取り込むことが必要であると考えられる。しかし、5fmより大きなα-α間距離を持った配位でG行列有効相互作用を求めるためには非束縛状態を扱わなければならず、原理的な困難があることが分かった。そこで、23年度、この問題に取り組み、5fmより大きなα-α間距離を持った配位でG行列有効相互作用の距離依存性が小さいことに注目して解決することに成功した。
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