昨年度の検討をもとに、時間分解能を重視した、液体シンチレータを用いた中性子検出器を設計、製作した。製作した検出器は、ドイツマインツ大学のMAMI-C加速器におけるストレンジネス生成素過程実験の際に設置し、本実験と並行して、パラサイト実験としてデータ収集を行った。その結果、荷電粒子に対しては十分な性能が得られていることが分かった。中性子に対する性能に関しては、震災の影響により、本来用いる予定であった加速器施設が使用できなかったため、直接的なデータは出せなかったが、十分な性能が得られるものと期待される。 現実的な波動関数を用いたオージェ中性子スペクトルの導出については、Giessen大学のLenske教授を2月に招聘して詳細な議論を行う予定であったが、研究代表者が欠けたために本研究において行うことは不可能となった。 高時間分解能RF光電子増倍管に関しては、昨年度におけるYerevan大学Margarian教授との議論をもとに、具体的な実現方法を、光電面、ストリークカメラ、エレクトロニクスの各技術者と共同して詳細に検討した。光電面については、企業の技術者から光学設計について行うことが可能であろうという結論が得られた。RF部については、検討を行った企業の持っている技術では要求している性能が得られないことが分かったが、Margarian教授の開発したRF部を導入すれば実現できる可能性がある。読み出しのエレクトロニクスについては、既存の装置を駆使することにより実現することは可能であるが、費用の点において検討課題が大きいことも判明した。以上より、高時間分解能RF光電子増倍管に関しては、具体的設計、開発を行える一つのめどを立てることができた。
|