地上実験で、ホーキング・アンルー輻射検証の可能性を具体的に調べる為の実験装置を建設した。本実験では、高励起リドベルグ原子を電場により加速して空胴中に導入し、その後フィールドイオン化により電離して、その振る舞いを調べる。フィールドイオン化の検出は、空胴中に導入したリドベルグ原子の空胴通過後にイオン化電極を置いて実現する。実験装置は、空胴の壁を振動させると実のマイクロ波光子が生成されるという動的カシミア効果を実験的に検証する為の実験装置と基本的には同じセットアップになる。空胴は100mK領域までの冷却達成を目的としている。この為、極低温まで冷却出来るクライオスタットを製作し、パルスチューブと希釈冷凍機を内部に設置して、寒剤無しで冷却できるシステムを製作した。今年度は、クライオスタットと関連する低温実験機器・レーザー系・超電導ニオブによる共振空胴などを製作・設置した。リドベルグ原子励起用として、2段階のダイオードレーザーによる励起系を整備した。また、データ取得・処理系としてLabVIEW計測システムを構築し、リドベルグ原子のシュタルク特性などを計算するソフトも整備した。現在、実験装置全体を組み立てて、真空システム、冷却システム、レーザー系、超電導マイクロ波共振空胴の性能について、それぞれテストを行っており、今後全系を動作させて、当初の目的を達成出来るように装置を運転、実験を開始する予定である。
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