研究概要 |
超低温SQUID-NMR/MRI装置を製作するために超伝導磁気シールド付小型高均一度超伝導磁石を開発した。製作した超伝導磁石は3軸の線形磁場勾配コイルを含み、およそ0.15テスラまでの磁場範囲で40ppmの磁場均一度を直径5mmの試料空間に提供することができた。また、SQUIDを用いた低温低雑音増幅器の入力回路の最適化の知見を得るために、FETを用いた低温低雑音アンプを用いたテストを行った。クライオスタットの低温部分にアンプや同調入力回路を実装することにより、室温アンプを利用している現行の測定回路と比べて約10倍のSN比向上を達成することが出来た。 またこれらの開発と並行して、捻れ振動子測定とNMR/MRI測定を用いた固体ヘリウム4中の微量ヘリウム3の研究を行った。約100mK以下の温度で発生する固体の相分離現象を10ppm,40ppmの微量ヘリウム3を含む試料に対して観測し、高温ではヘリウム4中に均等に分布していたヘリウム3が相分離の進行に伴って結晶中のごく一部の場所に集積し偏在していることをつきとめた。またこのように大きな空間分布の変化があるにも関わらず、捻れ振動子測定で観測されるスーパーソリッド応答には有為な変化が見られないことを発見した。スーパーソリッド応答の大きさを約半分に減少させるに必要な不純物ヘリウム3の量はおよそ10ppmであるが、その大半が結晶生成時にあった場所から移動して結晶中の限られた場所に偏在するような変化の前後で、ほぼ同じ大きさのスーパーソリッド応答を示すということは、この不純物効果が通常考えられるようなものとは大きく異なったメカニズムで働いていることを示唆している。
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