光子は運動量の運搬体でもあることから、光による物体の搬送についての研究は数多い。しかしながら宇宙空間を除くと、地球上で輸送可能な物体のサイズは、実質的には数十μm程度が限界であった。本研究では、cmスケールの物体を光泳動や、光誘起の自律的運動を中心課題としている。研究の方法論としては、光照射によって引き起こされる、cm-mmのマクロ物体上の界面張力の空間勾配を駆動源とする。界面張力の空間勾配の生成には、1)光吸収による温度勾配の発生、2)光による有機分子の異性化反応、3)集光による誘電ポテンシャルによって誘起される液相の相転移(相分離)の、3つの異なる実験手法を用いる。本年度は、上記の実験系の確立を中心に研究を行い、以下の2つの成果を報告した。 イオン液体と液晶を混合させた溶液にレーザーを入射するとその焦点に定常的な特異構造が形成される。これは非平衡条件下における、空間特異性を持った相分離構造であると思われる。 水面上にオレイン酸液滴とオレイン酸ナトリウム顆粒を個々に浮かべた場合、界面に分子が広がる以外に特に大きな現象は起きない。ところが、両者を接触させた状態で浮かべると、長時間に渡ってそのコンポジットの自発運動が起きるという事が明らかになった。液滴に非常に大きなマランゴニ対流が誘起される事によって駆動しており、液滴と顆粒を組とした自律運動系である。今回は特に、下流の大きさを系統的に変化させた際の、コンポジットの運動モード変化に着目して系を解析した。また、現象論的なモデルを作成し実験と良い相関が得られた。
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