研究課題/領域番号 |
22654046
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 研一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80110823)
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キーワード | 光泳動 / 非平衡 / 非線形 / 光-運動変換 / レーザー |
研究概要 |
光子は運動量の運搬体でもあることから、光による物体の搬送についての研究は数多い。しかしながら宇宙空間を除くと、地球上で輸送可能な物体のサイズは、実質的には数十μm程度が限界であった。本研究では、cmスケールの物体を光泳動や、光誘起の自律的運動を中心課題としている。研究の方法論としては、光照射によって引き起こされる、cm-mmのマクロ物体上の界面張力の空間勾配を駆動源とする。界面張力の空間勾配の生成には、1)光吸収による温度勾配の発生、2)光による有機分子の異性化反応、3)集光による誘電ポテンシャルによって誘起される液相の相転移(相分離)の、3つの異なる実験手法を用いる。 昨年度までに1の課題の実験を行い、センチメータースケールの液滴や固体をレーザー光によって搬送することに成功している。レーザー照射部位近辺の温度の上昇した領域では、界面エネルギーが低下(界面張力が減少)する。液滴の重心付近にレーザーが照射されたときには、全体としては界面エネルギーの減少した面積が増大するため、液滴は系の自由エネルギーのより低い方向に移動する。これを、対流測定や温度測定から明らかにした。今年度は、対流や温度分布等を測定する実験と、理論やシミュレーションとの対応から、その運動メカニズムを解明した。現在論文投稿中である。 同様に、空気中に浮遊するマイクロメータースケールの液滴にレーザー光等の光を照射した際に誘起される逆泳動を解明した。通常、光圧を考えれば光のポインティングベクトルの向きに液滴が動かされる事が普通であり、実験でもそれが再現される。同時に、ある特定条件下ではそれと逆方向に動く現象が知られていた。しかし、その逆泳動のメカニズムは明らかになっていない。本年度は理論・実験め両面から逆泳動のメカニズムを明らかにし、論文として出版した。 また、昨年度は固体と液滴のコンポジットによって効率的に自律運動する実験系を発見した。並進運動と回転運動を取り出すとともに、それらの運動モード変化を系統的に調べ、固体と液滴の進行方向に対する前後の非対称性が制御パラメータであることを明らかにした。現在論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請当初の見込みよりも多くの成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
順調であるので、現在の方針を維持し、研究を推進する。
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