研究課題
本研究の目的は、非平衡非定常な環境において、生体分子の機能が頑健に発現する動力学的機構を解明する事である。生体分子の機能とは、揺らぐ外界のもとで、刺激に対する応答としての階層的集団運動が、分子自身の非線型動力学により頑健かつ自発的に形成され、それがさらに一連の構造変化・化学反応を動的に誘起することである。本研究では、計算科学・統計科学・非線型物理の学際的共同研究により、下記の課題に取り組んだ。(1)分子動力学計算で得られる大規模時系列データから階層的集団運動を抽出する「データマイニング」の開拓:タンパク質分子の分子動力学データに対し、ウエーブレットにより集団運動的な振動を取り出すことができた。さらに抽出された集団運動に対して、その動的な挙動の解析に向け、特異値分解などの手法を駆使し、集団運動の動力学を抽出する「データマイニング」の方法を開拓しつつある。(2)「データマイニング」で抽出された階層的集団運動に対して相関・因果関係を解析する統計的因果推論の構築:従来、時系列の因果性の解析は、定常性など限定的な状況でなければ困難だと思われてきた。しかし近年、福水らが中心となりカーネル非線形回帰分析にもとづいて因果関係を推定する方法論が展開されている。本研究では、これらの理論に依拠しながら、実際のデータ解析で重要となる原像問題・カーネル最適化問題に取り組み、従来の方法が不十分であることを明らかにした。(3)大自由度非線型力学系の不変集合解析による「粗視化」とそれに基づく階層的アルゴリズムの開発:大自由度力学系における階層的集団運動の特徴、時空間スケールにおける階層性の起源など、非平衡現象における集団運動を不変集合に基づいて研究した。特に「法双曲性の破れによる分岐現象」の存在を明らかに、この分岐現象が、反応座標の切り替わり等、力学系の階層構造の変化に帰結することを明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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