超高強度レーザー物質相互作用と放射線発生の物理を明らかにし、超高強度短パルスレーザー生成プラズマ電子線源の実用化を目指す。本研究の具体的目的は、超高強度短パルスレーザーと金属極細線(ワイヤー)との相互作用により、生成電子の線方向誘導による線端からの電子ビーム発生(微小点源、高指向性)の可能性を検証することである。 本研究に先立ちその要素実験として、薄膜に短パルス高強度レーザーを照射することにより発生する電子の放射線特性を調べた。その結果、放射特性は膜の導電性に大きく影響を受けることが明らかになった。裏面からの電子放射角度分布を調べると、ポリエチレン膜からはレーザー入射方向や膜に垂直な方向に放射されるのに対して、アルミ膜からは10倍以上の強度で膜の面に沿って径方向に分布することが判明した。また、ポリエチレン膜の裏面に薄くアルミ蒸着することにより、放射線量、分布ともアルミ薄膜に類する特性を示した。これらより、放射特性は裏面の導電性により決まると考えられる。裏面に帯形状のアルミ蒸着をしたポリエチレン膜では、面に沿って帯の長手方向により強い放射が観察された。すなわち、電子は導電性の高い箇所に収束する傾向がある。これらは、レーザー集光点へ周辺の導電部分より自由電子が流れ込むことにより、正電荷部分が広がるとともに、飛び出した電子が膜側に引き戻され、膜周辺の電場が弱まった際に、面方向に放射すると考えられる。これらの基礎研究を基に、超高強度レーザーを数10ミクロンの金属極細線に側面より照射することにより、電子が細線端より発生すると予測され、実験を実施した。その結果、極めて指向性の高い電子ビームが細線端より観測され、加えて、細線周辺にできる電場は初期の発生電子数により決まるので、その電場に束縛されるエネルギースペクトルも決まり、エネルギー幅を制限できることの可能性を示唆する結果も得られた。
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