超高強度レーザー物質相互作用と放射線発生の物理を明らかにし、超高強度短パルスレーザー生成プラズマ電子線源の実用化を目指す。本研究の具体的目的は、超高強度短パルスレーザーと金属極細線(ワイヤー)との相互作用により、生成電子の線方向誘導による線端からの電子ビーム発生(微小点源、高指向性)の可能性を検証することである。 高強度短パルスレーザーとワイヤーとの相互作用による電子線発生の実験を実施した。超高強度レーザーを数10ミクロンの金属極細ワイヤーに側面より照射し、ワイヤー方向の電子線の放射特性(空間角度分布、エネルギースペクトル)を調べた。その結果、次のことが明らかになった。(1)集光点より発生する電子(数100keV)がワイヤーにより収束し、ワイヤー端より高い指向性(65mrad)で放射した。(2)絶縁体ワイヤーではこのような収束は観測されない。これらの実験条件を荷電粒子運動計算コードによりシミュレーションした結果、(3)電子はワイヤー周囲を螺旋運動するように収束し、ワイヤー端より放射していることが示された。さらに、(4)この金属ワイヤーによる電子収束誘導は、メートル級のワイヤーを用いても実現することが実験的に実証された。これらの研究は、レーザーとワイヤーとの相互作用による電子線発生の世界で初めての成果であり、今後のレーザープラズマ生成・加速電子の制御法として新しい知見を与えるものである。高輝度、低エミッタンスビーム発生のための重要な要素として期待できるものである。
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