本研究は、パルスESRの手法により光合成反応中心内の電子移動反応を用いて生体膜上での量子テレポーテーション実現することを第一の目的とする。 これは①電子スピンを用いた量子テレポーテーションを実現する点②量子テレポーテーションを生体膜間で適用する点③テレポーテーションの検出に電子スピン共鳴法を用いるという三点において新規のケースとなる。結果を発展させ、量子スピン系の実験室系としての光合成反応中心を位置付けるとともに、新世代の電子デバイスとしてのタンパク質活用への基礎を築くことを目的とする 量子テレポーテーションにおける測定系では、情報送信者D-と量子からみあい状態A+B-,情報受信者B-は観測の際に個別認識することが必要である。通常ESR法は単一の周波数で観測するが、異なる周波数のマイクロ波を照射してそれぞれを観測することが必要である。昨年度までに5つの異なるマイクロ波周波数を発生させるソースを作成し、幅の広いESR信号に対応可能にし計測システムを完成させた。 本年度は、計測システムの改良と実際の光合成系への応用を試みた。 実際の光合成系への応用のため、酸化還元電位と電子移動の基礎データを収集した。 情報送信者D-としては還元型キノンとMn2+が試された。 また計測システムの改良によって情報送信者の高速(10マイクロ秒)の電子移動をとらえた。 還元型キノンについては情報送信者としての良い特性はを得られなかったが、Mn2+についてはA+B-からみあい状態下で機能することがわかった。 予備的な測定では良好な成果を得ている。 これらは結果をまとめた後、雑誌に投稿し報告する予定である。
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