研究概要 |
本研究では,マルチモード表面波の非線形波形解析法に基づいて表面波の振幅異常に関する情報を抽出し,さらにこの情報と高分解能な3次元S波速度構造モデルを用いて,地球内部の3次元非弾性減衰構造を復元するための新手法の確立を目的としている. 今年度は,地震波線のfocusing/defocusingによる振幅異常への影響を定量的に評価する上で必須となる3次元S波速度構造モデルの高精度化と,モード毎の振幅異常値を抽出するための新しい表面波波形インバージョン法の開発に着手した.まず,北米・豪州・日本列島及びその周辺域など,高密度広帯域地震観測網のデータが利用可能な地域における高分解能な3次元S波速度モデルの構築を進め,それらの結果の一部を,国際学術誌及び学会において発表した.これと同時に,振幅情報を効率的に抽出するための新しい非線形波形インバージョン法の開発も進めている.この新手法では,周波数に依存して変化するマルチモードの振幅異常を,極力少ない独立変数で表現できるよう,波線平均の1次元Qモデル(及び1次元S波速度モデル)をパラメータとし,摂動理論を応用して非線形波形フィッティングを行う.これまでのマルチモード位相速度の自動計測による結果から,複数の高次モードの波群が重なる周波数帯域において,位相速度の計測精度が落ちることが明らかとなってきた.これは基本モードの計測では問題にはならないが,複数の高次モードの振幅異常を計測する際には,位相速度の場合と同様の限界が生じることを示唆している.今後,複数モードが重なる条件下での振幅異常値の取り扱いや,その計測精度に関する定量的評価方法も含めて詳細に検討していく予定である.
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