研究概要 |
2010年2月に発生したチリ地震(M8.8)に対する二つの有限断層モデル(Hayes et al USGS chiliEQ homepage 2010,Delouis et al 2010 GRL)を孫ら(Sun et al,GJI 2009)らが開発した地球重力場と変位場を計算するプログラムに適応し、震源近傍の変位場と重力変化分布を計算した。その結果、どちらの有限断層モデルでもほぼ似たような鉛直変位と重力変化分布となることが分かった。上下動変位は遠地で4象限型になる。ジオイ、ド変化は2象限型となる。断層近傍では断層分布形状(断層領域、深さ、dip角、すべり方向)に強く依存したパタンが得られる。鉛直変位は震源近傍で4mを超えるが、ジオイド変化は高低差が約2cmと二桁小さいことが判明した。重力変化は断層近傍地表面(または海底面)では隆起により0.5mga1程度減少するが、隆起効果を除いた重力変化は逆に0.5mga1程度増加する。ジオイド高でみると断層近傍がほぼ隆起域となっている。ジオイド変化は地殻変動にくらべると絶対値は小さいが、遠地ほど寄与の割合が大きくなっていることが確かめられた。また、この地震により発生した津波は、遠地で系統的に理論津波より遅く到達していることが観測された。線形長波やブジネスク近似の津波では観測の遅れが説明できない。固体地球と津波のカップリングの影響をモード計算により見積もると、ほぼ観測された津波の遅れ(理論津波の進み)が説明可能と思われる。
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