本研究では、高度100km付近の超高層大気下端にある金属原子層にレーザーを照射して、遠隔地(距離100-200km)との光通信を行う発案をし、これまでの金属原子層の観測研究成果からその基礎設計をして、現有設備を活用して実証実験を行う。その伝搬特性を検討し、「新しい無線通信手段と超高層観測モニターシステム」が両立した通信・観測ネットワークシステムを提案することを目的とする。 本年度は以下の成果を得た。 1)変復調部の開発 送信側のレーザーについて首都大と極地研での実験セットアップの容易さと散乱強度を考慮し、ナトリウム共鳴散乱での実験が可能な送信系の開発を行った。首都大日野キャンパスにおける送受実験を行い送信系を確認した。 2)送受信システムの制御 送信点および受信点の間の同期を取る方法として検討の結果GPS衛星の信号を用いる方法を採用し、専用のハードウェアを開発して日野市と立川市の間で衛星に同期して装置を動かすことに成功した。 3)総合試験と将来システム提案 首都大からレーザー光を発射し、国立極地研究所で受信を行う情報伝送実験を行い、本研究で提案するバイスタティックの共鳴散乱通信および観測システムの実現可能性を示すことができた。なお、レーザーのトラブル等のために十分な受信実験統計データを得るまでにはいたらなかったが、今後レーザーを整備した再実験で今回の成果を確認する予定である。また、バイスタティックシステムの鍵を握る送信光と受信望遠鏡の視野広がりおよび視野重ね方向については予想以上に検討が進展し今後のシステム実用化に対する期待が大きい。
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