研究概要 |
本研究は,ざくろ石に包有されたオンファス輝石質単斜輝石に着目し,結晶内の秩序-無秩序転移によって生じたナノスケール微細組織(特に反位相領域のサイズ)について,電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)と電界放出型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて解析する.低温高圧変成岩中の変形を免れたオンファス輝石の反位相領域のサイズとその多様性の規則性を温度・時間の指標として捉えながら,先進的なナノスケール加工・組織解析装置(FIB/FE-SEM,FE-TEM)を用いてカタログ化し,複数の閉止温度が異なる放射性同位体年代測定を相補的に加えることによって,秩序-無秩序転移カイネティクスを莉用したオンファス輝石地質速度計を実用化する。 研究二年目は,天然の低温エクロジャイト試料(ローソン石エクロジャイト試料及び含ひすい輝石ローソン石エクロジャイト)と,中温エクロジャイト試料(含藍閃石緑れん石エクロジャイト)に含まれるオンファス輝石質~ひすい輝石質単斜輝石のサブミクロンサイズの微細組織について,1.FE-SEMによる反射電子・EDS/WDS元素マッピング法による特徴付けを行い,2.単斜輝石中のサブミクロンサイズの鉱物・流体包有物について,顕微ラマン分光装置を用いた同定を行った.3.初年度に調整したざくろ石結晶にいては,同様の手法による単斜輝石包有物の微細組織の特徴付けと,二次イオン質量分析装置を用いた5ミクロンステップの微量元素濃度の高精度測定を進めた.これらの取り組みによって,単斜輝石中のサブミクロンサイズの非平衡成長組織と,ざくろ石中の非平衡成長を記録した微量元素濃度の組成累帯構造を読み取ることに成功した.
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