研究概要 |
土佐海盆のMD01-2423,遠州灘沖海山のEOS-1PC,沖縄トラフ南部のOTK-2PCの各コアを優先して研究を進め,次の結果を得た。 (1)OTK-2PCについて,浮遊性有孔虫の表層種,亜表層種をそれぞれ拾い出し,炭素・酸素同位体比を測定した。その結果,最終融氷期には完新世や最終氷期に比べて酸素同位体比偏差が有意に大きくなった。これは,南部沖縄トラフ域では最終融氷期に成層化が強まって水温躍層深度が浅くなった可能性が示唆される。 (2)EOS-1PCの完新世および最終融氷期の層準から浮遊性有孔虫の表層種,亜表層種をそれぞれ拾い出し,東京大学において^<14>C年代測定を行った。その結果を基に,表層~亜表層^<14>C年代差を求めたところ,完新世ではほとんど^<14>C年代差がないが,最終融氷期では1000年以上の^<14>C年代差が存在することがわかった。これは,前年度に明らかにした四国沖の^<14>C年代差の傾向とは異なるものであった。これらのことから,亜表層種の^<14>C年代値は,時代によって表層種とは異なる年代値を持つことが普遍的に起こっていることが判明した。 (3)EOS-1PCコアの最終氷期層準では浮遊性有孔虫の表層種(Globigerinoides ruber, G.sac culifer)の産出状況が悪かったため,現時点で最終氷期の^<14>C年代差が得られていない。今後,堆積物試料を増やして分析データを加える必要があるものの,日本列島南岸の四国沖と遠州灘沖では,最終氷期以降の亜表層水塊構造,特に水温躍層深度が有意に浅くなる時代が異なる可能性が出てきた。
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