研究概要 |
本研究では,従来の岩石鉱物試料中の水素同位体分析技術を再検討し,いわゆる無水鉱物中に100-1000ppmオーダーで含まれているごく少量の水の水素同位体組成分析を行う手法を開発する。それが可能となれば、地球深部に大量に含まれる水素の同位体組成に制約を与え、地球全体の水の起源に迫れる可能性がある。水の含有量(濃度)が低い試料では、局所分析による同位体分析は難しく、バルク分析の手法をとる必要がある。過去のバルク分析では、試料から抽出された水を還元して水素にする際に、還元剤としてウランが用いられてきたが、金属ウランの使用が困難になるとともに、様々な代替還元剤(金属亜鉛・クロム・マグネシウムなど)が試されてきた。しかし、ウランに代わる強力な還元力を持った還元剤は今日でも安定的に供給されておらず、特定の試薬製造者の特定のロットなどが慣習的に用いられる場合が多い。しかし、なぜその試薬のみで同位体分別が起こらずに還元できるのか、その仕組みは明らかにされていない。金属還元剤の中で、比較的低温での使用が可能な亜鉛は、石英ガラス管への水素の溶解や拡散散逸に伴う同位体分別が小さく有利であり、さらに試料管内で還元を行うZn-shot法は、固定還元炉に比べてライン全長を短くし、ブランクを最少にできるため少量の水試料の分析に適している。しかし還元試料管の体積を大きくすると、質量分析計に導入する際のデッドボリュームが増えてしまう。事前に真空中で亜鉛を高温加熱し、蒸発凝縮過程によって試料管内壁に蒸着する方法は表面積を増すには一定の効果があるものの、表面に露出した亜鉛のモル数は限られる。今年度、様々な実効的亜鉛/水比や温度条件・還元管形状を試すことによって、十分な還元力を得るためには、酸化膜内部から亜鉛蒸気が継続的に供給され、新鮮な金属表面が常に更新されることが本質的であることがわかった。
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