本年度は、1)水の還元における粒状亜鉛(Zn-shot)法の改良と還元反応機構の検討 2)固定還元炉の再検討 3)微小量試料に適した真空ガラスラインの作成を行った。Zn-shot法では、体積約40mLのテフロンニードルバルブ付属還元管を用い、温度勾配のあるマントルヒーターにおいて、Zn-shotの入った還元管底部を490~495℃で30分間加熱して水の還元を行った。還元の成功の判断基準として、上部(低温部)の内壁面に金属光沢を持つZnが再凝縮し、同時に元のZn-shotは、表面に酸化膜が生成して内面は光沢を持った亜鉛金属の多面体結晶空洞が形成される組織が用いられることがわかった。化学量論的には十分に多量のZn-shotを用いても、還元管内の水蒸気圧が高いと金属亜鉛の表面積に関わらず還元は十分に行われなかった。このことから、還元反応の主体は継続的に蒸発した亜鉛蒸気と水蒸気の、気体分子同士の反応によって行われている可能性があり、これまでに報告されている、還元時の分別に対する亜鉛中の微量元素の効果も、この蒸発速度に関係している可能性がある。また還元管内の温度勾配は、亜鉛の蒸発凝縮の継続的な進行に寄与している可能性がある。一方、固定還元炉の場合は、水は真空ラインから徐々に供給され体積も大きくとれることから、Zn-shot法に比べると水蒸気圧は低く保たれる。還元炉の形状、金属還元材粉末の粒度などの再検討により、分別の小さい還元が行える可能性があることがわかった。東北大学ガラス機器開発研修室で新たに製作した真空ガラスラインは、現有ラインでの経験を基に、CuO酸化炉の交換を容易にし、ライン全長を短くして吸着効果を軽減するなどの改良を施したものである。ラインの分岐により、残留ガス濃度計やテプラーポンプへの接続も可能としている。
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