本課題は、生物的メタン生成を高圧下で起こす事が可能か否か、さらには生物的メタン生成とメタンハイドレートを同一の高圧容器内で起こす事が可能か否か、を検証することによって、海洋ならびに陸地地下圏において今なお起きつつあると推定される生物学的メタン生成ならびにメタンハイドレート形成を実験室的に再現することを試み、メタンハイドレート成因解明をめざすものである。本研究ではまず生物的メタン生成を高圧下で起こす事が可能か否かを検討した。培養は地下圏にも存在する典型的なメタン生成古細菌であるMethanothermobacter thermautotrophicusを用いた。同菌は水素・二酸化炭素ならびに蟻酸を炭素源ならびにエネルギー源として用いることができる。そこで我々はまず、蟻酸を用いて高圧培養を試みた。高圧培養にはメタンハイドレート生成実験に用いる数種のカラム状高圧容器を用いた。培養はシリンジポンプにより圧力容器内部の圧力を保持しながら上述したメタン生成古細菌の培養液ならびに基質を注入し、カラム状容器に高温ヒーターを装填して行った。解析は背圧制御弁を通して排出される溶液をセプタム法でシリンジにより抽出し、溶存ガスを測定した。本実験手法を用いることによって当該メタン生成古細菌が温度55℃、圧力0.1MPa、10MPa及び15MPaの条件で生育しメタンの生成を確認することに成功した。これらの実験条件をもとに今後、生成するメタンと培地の炭素源(溶存無機炭素)、水素源(水)の同位体分別を、海底メタンハイドレートの同位体データと比較することにより、メタンハイドレートのメタンの生成経路を評価する研究を進めてゆく。
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