研究概要 |
本研究の目的は,核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて,堆積物などの地質学試料に保存されている多種多様の有機化合物を,網羅的,定量的,かつ迅速,簡易に非破壊でスクリーニングする「ジオメタボロミクス」と定義できるような全く新しい研究手法を開発することである。その達成は,堆積物,堆積岩等に含まれる有機化合物の一次情報(どのような化合物がどのくらい存在するのか)とその深度分布の詳細を,誰もが簡単に,高分解能で描き出せるようになることを意味する。本研究が成功すれば,本法が,今後,地質学試料を用いた研究の必須ツールになることは明白であり,過去の地球環境の復元や気候変動の解析だけでなく,将来の気候変動を予測する研究や地下生命圏の研究などにも新しい展開をもたらすことが期待できる。 本年度は,その最初の段階として,既存NMRの高感度化を行った。具体的には, (1)最近,低濃度試料に開発された,微小サンプルチューブ(1mmプローブ)の利用 (2)使用する溶媒の種類や量 (3)正確に定量を行うために標準法(内部標準や外部標準)の検討 を実施し,クロロフィルとアミノ酸を代表として,従来法の1000分のであるマイクロ(10^<-6>)モルオーダーでの定量的な検出法の確立を目指した。現在のところ,当初の目的はほぼ達成され,1mmプローブの利用により,クロロフィルやアミノ酸の高感度(従来法の約500分の1)での定量分析が可能となっている。この結果は,現在論文を準備中である。また,さらなる高感度化を目指し,励起法等の最適化を実施中である。
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