研究概要 |
本年度は,平成22年度の研究で開発した既存NMRの高感度化技術を用いて,クロロフィル,アミノ酸等の有機化合物をターゲットとしたスクリーニング法の開発を試みた。具体的には, (1)数マイクロモルの試料から定量的なスクリーニングが可能な1mmプローブを用いた1H NMRを主軸として,1H-13Cや1H-15Nの二次元NMRの実施 (2)13C,15Nラベルのフルラベル体,または一部官能基のみのラベル化体の導入 の組み合わせで,最終的には,数マイクロモルの有機化合物の定量と同定ができるスクリーニング法の開発を試みた。 当初の予想通り,13C NMRの測定では,数十マイクロモル(13Cラベル時)の感度で様々な種類の有機化合物の分析が可能である。しかし,1H-13C 2次元NMRの感度は,当初の目標値に比べてまだ1.5-2.0桁以上悪い。また,15Nに関しては,ラベル試料においても,数十ミリグラムの試料を必要であり,これは,当初の目標値に比べて3-4桁以上悪かった。これは,2次元NMRの様々な条件設定(濃度,用いる溶媒,pH等,核スピンの励起方法)が不十分なため,また,試料に含まれる夾雑物の干渉のためと考えられる。 平成24年度は,様々な条件を順に詳細に最適化しながら,これらの問題を克服したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
有機化合物同士の干渉や,化合物により溶媒への溶解度が異なる問題など,当初あまり予想していなかった事柄が大きなハードルとなり,交付申請書に記載した計画通りの進展が非常に難しい。また,標準試薬が非常に高価(例えば,13Cラベル化メタノールは,\49,500/1g)かつ納期に時間がかかる(受注生産などのため),十分な量の標準物質が確保しにくい点なども一因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前処理法の検討と,既存NMRの高感度化が急務である。具体的には,前者においては,(1)妨害有機物の同定,(2)有機溶媒による抽出,マイクロ固相抽出などの前処理法を検討し,妨害有機物や塩の除去法を検討する。また後者においては,(3)核スピンの励起方法の検討等,2次元NMRの測定条件の最適化,を行う。
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