本研究では触媒などのモデルとなる単結晶酸化物表面に吸着した分子の構造や反応を探るための新しい表面増強非線形分光法を提案している。これまでに表面敏感な振動和周波発生(VSFG)分光法を二酸化チタン単結晶表面TiO_2(110)に適用し、大気中で吸着した単分子層水分子の変角振動(1600cm^<-1>)が通常のVSFG信号より3桁ほど強く観測されることを見出した。これは酸化物欠陥準位増強効果により単分子層水分子が強く観測されたと思われる。本年度はこのピークが、どのような条件で観測されるかを知るために様々な処理をした二酸化チタン表面のVSFGを大気中で測定した。具体的にはルチル単結晶表面において異なる酸化状態、異なる面方位のVSFGスペクトル測定を行った。またピークが単分子水分子由来かどうかを確かめるためにグローブボックス中で重水素置換した表面の測定も行った。その結果、大気中では表面状態や重水素置換の有無に限らず常に1600cm^<-1>のピークが強く観測されることが分かった。一方で他のグループに超高真空中で表面処理、重水素置換をお願いし、その試料をアルゴンパージしたセルで測定しがやはり同様の結果であった。これらの結果は、表面第一層の水分子が酸化物表面と強く相互作用するために様々な表面処理を施しても僅かな雰囲気中の水の存在で同じような表面になってしまっていることを示している。そこで表面状態をきちんと評価するためには超高真空中で表面処理した表面をその場で観察する必要性がある。そのために超高真空中で各種表面処理及びVSFG測定ができる超高真空槽の設計、制作も行った。
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