研究概要 |
プラズモン共鳴(自由電子の集団電子運動)は,光および電子により励起可能であるが,励起法により分散関係に違いが生じると予想される。本研究では,近接場非弾性トンネル分光顕微鏡を開発し,これにより電子励起されたプラズモンと光励起されたプラズモン波動関数の空間形状を可視化して励起法によりプラズモン波動関数がどのように変化するかを解明することを目的とした。 当該年度は,ナノ構造のトンネル電流像を計測するため,近接場顕微鏡を基礎とする非弾性トンネル分光顕微システムを構築することを目的とした。そのためには,プローブと試料を導電性にする必要があり,従来用いられている非導電性の近接場プローブを金属コートにより電気伝導性にする方法を構築した。また,トンネル電流を検出するためには,微小電流計,前置アンプが必要であり,これを大学外の技術者の協力を得て完成させた。これらをもとに,近接場トンネル分光顕微鏡の試作し,これまでに試料の表面形態像,トンネル電流像,光学像の同時測定が可能な装置を完成した。金ナノ微粒子を用いたテスト計測から,観測されるすべての像において,数十nmの空間分解能を実現できること,また,プローブの形状を反映した,トンネル電流像が観測されることが明らかとなっている。しかし,再現性がやや低く,また装置を長時間安定に動作させることが困難である。現在,プローブや距離制御系の改善により,これらの問題を解決することを検討している。上記と平行して,同装置を用いたプラズモンの光学測定も進めており,これまでに.ロッドや円盤のプラズモン波動関数を可視化できることを確認している.
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